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バーンロムサイからの便り

Vol.04 自然体でいること2006/11/14

バーンロムサイで私が働いている間、よく耳にし、体で感じた言葉は『自然体でいること』でした。

 

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 私がバーンロムサイで働き始める前は、肩に力が入り、いろいろなことに対して身構えていた気がします。それはきっと、バーンロムサイを特別な場所だと考え ていたから。直接出向いたことがなかったバーンロムサイ。タイという外国にある、HIVに母子感染している孤児が30人暮す家…。

バーンロムサイでボランティアスタッフとして働くことは自ら決めたこと。しかしそれまでの私は、海外でのボランティア活動に参加したことは一切なく、海外 旅行の経験さえ乏しく、海外で1週間以上の時間を過ごしたことはありませんでした。もちろんタイ語は全く話せません。そんな私ですから、バーンロムサイは 特別な場所だと考えていました。ホームページや本を通してしか知らない、そこで暮す子どもたち、日本人スタッフ、タイ人スタッフでさえも何か特別な人たち であるような気がして。2年前、バーンロムサイに足を運ぶ前までの私はそうでした。バーンロムサイのことをテレビのニュース番組で初めて知ってから、チェ ンマイに足を運ぶまでの私は。

 

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バーンロムサイに着いたのは深夜。子どもたちが寝静まった時間。暗闇の中、全くどういう場所なのかわからないままに眠りました。
翌朝5時過ぎ。昨日の日本からの移動で疲れていたはずなのに、目が覚めてしまいました。窓の外から子どもたちの騒がしい声が聞こえてきたから。窓を少しだ け開けてみて目に入ってきたのは、子どもたちが朝の身支度をしたり、階段を上り下りしたり、誰かを大きな声で呼んだりしながらぱたぱたと動き回る姿。どこ の家庭にでもあるような、朝の風景。そこで初めて、バーンロムサイは特別な場所ではないと実感できたのでした。

そしてそこで働く日本人たちも、全く特別な人たちではありません。ボランティアで働いている、と言うと多くの人は「すごい」「大変でしょう」などという言 葉をかけてきます。私はいつもその言葉に違和感を覚えてしまいます。バーンロムサイでボランティアスタッフとしての時間を過ごした私は、ボランティアで働 くということはそんなに肩に力が入ったことではなかったと感じているから。

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 例えば、一般的な家庭で「子育て」をしている状況を考えてみます。子どもが生まれたら、その子の生活、命を守り育てていくために、お父さんお母さんは奮闘 します。子どもにご飯を食べさせてあげたり、そのためのお金を得るために働いたり。子育てに保障や見返りを意識することは、ほとんどないのではないでしょ うか。子どもがいなければもっと自由気ままな生活があったとしても。お父さんお母さんは、子どもとの生活を時には悩み苦しんでも、楽しく過ごしていくもの では、と。
バーンロムサイもそうした家庭と変わりはありません。大人の力を必要とする子どもたちがいて。そしてそのために誰かがやらなければいけない仕事があって。 それをする力が私にあったとしたら。金銭的な見返りはないかもしれないけれど、そこで働くことを必要としている人たち、子どもたちがいる。確かに大変なこ とも出てきます。しかし私にとっては、そういう状況を知っているのに見過ごすことの方が、心苦しく思うことでした。

 

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本当はやりたくないことをやるために、無理をしているのではありません。ただただ自然体で、心の動くままに。私ではない誰かでもできるだろうけど、私でも できるのであれば力を貸したい。私がバーンロムサイでしてきたことは、本当に小さなこと。でもそれを必要としていたバーンロムサイがあって。そしてそこに 暮らす30人の子どもたちがいた。一緒に暮らせる家族がいなくて、HIVに感染している。そうした非凡な状況を背負っていると見られる子どもたちが、ごく 自然に笑って元気に生活していた。そんな家庭を守りたいと思う気持ちは、自然なこと。

 

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子どもたちと親代わりの大人たちとの間には、血のつながりはないけれど。子どもたちの笑顔を望むことに、血のつながりなんて関係ありませんでした。子どもた ちが私のことをメー(お母さん)と呼んでくれて、笑っていて。そしてその自然な笑顔が続いていくことを願う。それが私にとってかけがえのない財産です。

バーンロムサイで働いている日本人たちは、そうして心の動くままに自然体で暮らしています。自然体でいること。それを私に教えてくれたのは、代表の名取美 和さんを始め、バーンロムサイで出会ったスタッフたち、ボランティアたちでした。そしてバーンロムサイの外にも、日本にも、そうして自然に心の動くままに 支援してくださるたくさんの人がいます。そのおかげで、子どもたちが今日もタイ、チェンマイで笑って過ごしています。

自然体でいること。バーンロムサイがそれを頭で意識することなく、自然に体で感じられる家であることを。子ども達が、お父さんお母さんであるスタッフたち皆が気持ちよく過ごしていける家であり続けることを願っています。

 

2006/11/14 ボランティアスタッフ 小泉幸季
(2005.4.8~2006.9.30)

*都合により掲載が遅れましたことを深くお詫び申し上げます。
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