- Vol. 62 コロンビアの熱帯食材2011/06/23
日本を離れ2か月以上が過ぎました。
南米コロンビアでの中期滞在のため、現在海沿いのカカオ生産地域で暮らしています。毎日30℃を超える陽気で湿った風が時折吹き抜けるこの地では、昼夜問わずラテン音楽が聞こえてきて、ビールやラム酒を片手に道路や浜辺で人々がまどろむ姿が良く見られます。南米での熱帯生活は普段目に触れない食材や料理に出会うこと多く、カカオだけでなく日常生活の中でも興味
深いものを目にすることが沢山あります。今回はカカオの話の前に、こちらで日々食している食材についてご
紹介いたします。
食材の中でも特にフルーツは不思議なものに出会うことが多く、市場やスーパーでは“どうやって食べるのだ
ろう?”と不思議に思う、かたちも色も変わったものがずらりと並んでいます。

例えば標高1,200m以下の地域で栽培される「グアマ・マチェテ(GUAMA・MACHETE)」と呼ばれるフルーツは、見た目はまるで巨大なさやえんどうのような形をしていてとても果実には見えませんが、口にすると意外な甘さが広がります。

カカオやフルーツの収穫や庭仕事のときに使用される選定ナイフ「マチェテ」に良く似た形状をしているためこの名がついたそうで、大きな木の枝から実がぶら下がるように生ります。
細長い果実を軽く捻って、縦にバリっと割るとカカオの実のように白い果肉と大きな種が現れます。表面が綿のように少しモコッとした果肉部分を種ごと口の中に入れ、果肉の部分を口の中で剥がして噛むと、とろりとした触感と甘い味わいが広がります。
「マモンシージョ(Mamoncillo)」は緑色の小さなフルーツで、ハリのあるパリっとした皮を指で摘まむとはじけるように皮が割れ、風船ゼリーのように中から透明なオレンジ色の果肉が顔を出します。種のまわりについているこの果肉をしゃぶって食べるのですが、最初はライムに少し似た強い酸味と甘さが広がり、しばらくすると渋柿のような軽い渋みが広がります。チョコレートのテイスティングをするとき中南米では“渋味”の感覚が異なるのか、渋味を感じにくいという人に良く会います。先日こちらでチョコレートのテイスティングをした際、“マモンシージョみたいな後味が舌に残りませんか?”と説明したところ、“ほんと、後味がマモンシージョに似てる!!”と、意外にも簡単に理解してもらえました。

「グラナディージャ(Granadilla)」は琵琶のようなかたちをしていますが、触った感じはもっと硬い殻に包まれていて、どことなくマラカスを連想させます。マンモシージョ同様パリッとハリのある皮を割ると中から白い綿のような部分が現れ、更にその中にはパッションフルーツのような沢山の小さな黒い種、それを包む透明な果肉が詰まっています。見た目とは全く異なり、果肉には蜜のような甘い味わいが感じられ、種を一緒に噛むと心地よい酸味が混ざり、熱帯フルーツ特有の濃厚なのに後味爽やかな美味しさが広がります。

「サポテ(Zapote)」と呼ばれるフルーツは見た目が野菜のようですが、マンゴーのように鮮やかなオレンジ色の果肉と大きな種が特徴で、やわらかな果肉は柿のようなとろりとした食感が楽しめます。スプーンですくって食べたり、水や牛乳でジュースにして飲んだりします。
毎日の食に欠かせないのが「プラータノ(Platano)」。バナナに良く似ていますが、食用バナナで加熱調理をして頂きます。緑色の熟する前に食べることが多いのですが、室温で熟すとまるでバナナのように黄色くなり、甘さがぐっと増してきます。
縦長にスライスしてたっぷりの油で揚げ焼きしたり、スライスしたものを潰して油で揚げた“パタコン”にして、食事のサイドミールとして頂きます(レモンをかけて頂くことも多いです)。熟したプラータノはデザートに使用されることもあり、縦に切り込みを入れチーズを載せてオーブンで焼き、“焼きバナナ”の甘い味わいとチーズの塩味とのコンビネーションを楽しんだりもします。
カカオ栽培の現場では、新たにカカオの苗木を植えるときこのプラータノを農園内に一緒に植えることが良くあります。これは、プラータノは生育が早くカカオの木に適度な陰を与えるという栽培視点での目的もありますが、カカオの苗木を植えてからその実が収穫出来るまで数年現金収入を待たなければならない中、結実したプラータノを市場に売ることでその間の現金収入を得ることが出来るという、現実的な利点も備えています。
さて次は、こちらでの朝食のご紹介です。
週に2~3回は仕事仲間と朝食ミーティングをとるのですが、こちらで良く食べるメニューは「アレパ(Arepa)」と呼ばれる薄い円形状に成形したトウモロコシのマサ(生地)を焼いたものやそれに卵を詰めて揚げた「アレぺ・ウエボ(Arepa de Huevo)」。
ユカ芋のマサ(生地)でチーズやひき肉を包んだ「カリマニョーラ(Calimañora)」、「タマル(Tamal)」というプラータノの葉で米やお肉を包み蒸しした熱帯版“ちまき”なども良く頂きます。カカオのメイン生産地にあたる山岳地帯では牛骨付き肉で出汁をとったスープ「カルド・デ・コスティージャ(Caldo de Costilla)」が有名で、朝からこの牛肉スープを頂いたりもします。

トウモロコシ、米、ユカ芋など、様々な食材を主食とするコロンビアの食事は、地域ごとに豊かな朝食メニューを持ち合わせます。どこに行っても合言葉のように聞かれるのが、“朝ご飯は食べた?”農園に行っても、街角でも、元気な人々を沢山見かけます。沢山のフルーツとしっかりカロリーの朝食で、今日も元気な一日がスタートするのです。
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さて、チョコレートの世界でカカオを語るとき、必ずと言って良いほど“クリオロ”という言葉が出てきます。チョコレートの世界にいるとこの言葉が何か特別な言葉のように聞こえることがありますが、もともと“クリオロ(Criollo)”とはスペイン語で“その土地の”を表します。こちらのスーパーなどで買い物をすると、“バナノ・クリオージョ(Banano Criollo)”、“マンゴー・クリオージョ(Mango Criollo)、“パパス・クリオージャ(Papas Criolla)”(CriollaはCriolloの女性名詞形)などの食材に出会うことがあります。
バナノ・クリオージョ(バナノはスペイン語でバナナ)はモンキーバナナのような小さなバナナ。こちらでも日本で販売されているものと同等サイズの大きいバナナはありますが、こちらの小さな“クリオージョ”の方が美味しく、味や香りがしっかりしています。パパス・クリオージャ(パパはスペイン語でじゃがいも)は黄色がかった新じゃがサイズのじゃがいもで、日本の馬鈴薯に似た“パパス・ブランカ”(スペイン語で白いじゃがいも)と比較すると、先のバナナ同様じゃがいもの濃厚な味わいが感じられます。
コロンビア、特に首都のボゴタ周辺ではじゃがいもを使用したスープを良く頂きますが、その際スープベースには“パパス・クリオージャ”(実際には溶け崩れてスープに混ざっています)を、具には“パパス・ブランカ”を組み合わせて使用することがしばしばあります。

野菜や果物だけではありません。鶏にもこの名が付いています。“ガジーナ・クリオージャ(Gallina riolla)”は雌鶏の地鳥で、やわらかな肉質とコクのある味わいと香りを有するため、スープや鶏肉料理に使用されます。
このように食材に“クリオーロ(クリオージャ)”の名前が付くと、食材本来の味わいがしっかりと楽しめるものが多く見られますが、カカオに関しては文化背景の違いから若干異なる印象を受けることがあります。
カカオの世界では逆に“クリオロ”のカカオをチョコレートに仕立てると、ナッツやフルーツ、キャラメルのアロマがふくよかに感じられますが、チョコレートの味わいそのものは異なって感じられます。
小さいころから私たちの舌は、中南米のクリオロ系カカオとは異なる、ポリフェノールを沢山含むアフリカ系のカカオの味わいに慣れてしまっています。カカオの香り・あるいはチョコレートやバニラの香りの強いチョコレートを「チョコレート」として認識する傾向にあるのです。
ですからポリフェノールを多くは含まないクリオロ系のカカオ豆をチョコレートにしたときには、「チョコレート」そのものの味わいはとても穏やかで(人によっては少し物足りないくらいの)繊細でまろやかな味わいに感じられるのです。

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農家の人と話をしていると、頻繁に「カカオ・クリオーロ(クリオロ)」の言葉を耳にします。彼らにしてみれば、昔からその土地で栽培され、親から譲り受けた農地で育てているカカオは「クリオロ」であって、遺伝子学的な解釈とは異なった位置、異なった価値で存在しているのです。丁度今日、カカオ農家の人に「あなたにとってカカオ・レヒオナル(昔から栽培されている地元のカカオ。カカオ・クリオロと同等の意味で使われることが多い)とはどういった存在?」と聞いたところ「ミ・コラソン(私の心)」と答えが返ってきました。
チョコレート市場で“クリオロ”探しが続く中、カカオの市場では生産性が低くても家族が代々育ててきた“クリオロ”を敬愛して栽培し続けるか、生産性の高い余所からの品種を新たに植えるかで、葛藤している生産者が沢山いるのです。
2011/06/30
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