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可可豆見聞録

Vol. 55 頭で頂く美味しいチョコ本2010/05/10

 最大で11連休となる2010年のゴールデンウィーク。国内外へと旅立たれる方も多いのではないでしょうか?

 

 丁度先月アイスランドでの火山の噴火があり、南米へ帰国するはずの私の友人は「空港閉鎖で帰ることが出来ない。お手上げ状態だ」とメールを送ってきました。自然現象だから仕方が無いとはいえ、もし自分の予約したフライトが急に欠航となった場合、ましてそれが渡航先の海外ならば、身動きが取れない状況に私も途方に暮れてしまうと思います。

 私自身、フライトの欠航では無いにせよ、以前自然災害により不測の事態に陥ったことがあります。数年前、南米から帰国するときのことでした。

 

 アメリカ・ヒューストンで飛行機を乗り継ぐためホテルに1泊する予定だったのですが、丁度大きなハリケーンがヒューストンを直撃し、宿泊予定だったホテルの一部が壊れてしまったという事態に遭遇しました。出国の前日にホテルを予約した代理店からハリケーン直撃の連絡をメールで受け、一瞬その内容に目を疑いましたが、直ぐに代わりに宿泊出来るホテルを探してもらえないかお願いしました。しかし被害は他のホテルにも及んでいて、仮にホテルが無事でも避難する人や救援隊の人々で全室満室との答えが返ってきました。

 

 念のため自力で思いつく空港近辺のホテル全てに連絡を取るものの、1つとして良い回答は帰ってきません。そのとき改めてハリケーンの被害がそれほどまでに甚大だったことを知ったのですが、一部の欠航便は出ているものの運良く空港は閉鎖されていないということで、ひとまず翌早朝にヒューストンへ向かいました。

 

 パナマで一度乗り換えその間に航空会社に事情を説明。出来れば直ぐにヒューストンを離れた方が良いと航空会社に勧められたので、急いでハリケーンを回避しながら無事予定通りに帰国出来る方法が無いか調べました。その日の午後にパナマからヒューストンへ。空港カウンターで相談した結果、そのまま北上してミネソタ州のミネアポリス空港に行くことになりました。

 

 南米のホテルを出たのが現地朝5時。午前中にパナマで乗り換え、夕方ヒューストン、そして深夜12時前にやっとミネアポリス到着。トラブルを回避しながら19時間かけて南北のアメリカ大陸を北上したため、気がついたらホテルのベットの上で布団もかけずに朝を迎えていました。

 

 それからと言うもの、不測の事態に備え機内持ち込みの手荷物には様々なものを用意するようにしました。急なフライト変更でスーツケースが目的地に届かないことだって考えられます。まして中南米線は。ですから飛行機に搭乗するときはいつも決まって、パンパンのボストンバックを片手に抱えているのです。

 


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 旅シーズンが近づくと、書店は沢山のガイド本で賑やかになります。私の場合メジャーどころではない国に一人で足を運ぶことが多いせいか、「地球の歩き方」というガイドブックにとてもお世話になっています。観光本としてだけでなく日本を離れて各国を旅するバックパッカーが必要とする内容まで、様々な視点の情報が詰まっている「地球の歩き方」。そんな地球の歩き方からこの春、とってもかわいらしい“aruco”シリーズが登場しました。

 

c-55-01.jpg コンセプトは「旅好き女子のためのプチぼうけん応援ガイド」。雑貨本のような印象の表紙をめくると、沢山の写真や可愛いイラストとともに、女子目線の情報がぎっしり詰まっています。紹介されているのは人気の「パリ」、近くてエキサイティングな「ソウル」「台北」、オリエンタルな「トルコ」「インド」と現在のところはこちらの5都市。一般的な観光のためのガイドブックと言うよりも、街歩きや雑貨、スイーツ&グルメ情報が中心で、土地勘が無くても一人旅を満喫出来る楽しい内容にまとまっています。

 

 特にパリ版には流行のチョコレート情報がしっかりと掲載。最近のパリのガイドブックはショコラトリーの情報が昔より沢山掲載されるようになってきましたが、arucoのパリ版には毎年秋に開催されるサロン・ドュ・ショコラ(以下サロン)の特集ページまで掲載されているのです。開催日時だけでなく、オススメ時間や持って行くと便利なもの、購入ショコラの日本への持ち帰り方など、痒いところに手が届くような情報もしっかり。

 

 ここ数年サロンでお手伝いをさせて頂いていますが、確かに知っているとお得な情報。この秋本場のサロン・パリに行ってみようかなと思われている方、パティスリー情報も充実のarucoをチェックしてみてはいかがでしょうか。豆粒のように1mm程度ですが、とあるページに私もひょこっと映っていました。たまたま本を購入した後、あれっ?なんか見覚えのある・・・あ、私の頭だ!!といった具合に。これにはちょっとビックリです。

 


 巷では足早に進化するショコラ市場とともに、毎年様々なショコラ本が出版されています。
ココ最近の私のお気に入りは、2009年に出版されたピンク色が素敵な2冊のショコラ本。

 

c-55-02.jpg 1冊は以前コラムVol.30でご紹介したチョコレート鑑定家 クロエ・ドゥートレ・ルーセルさんの著書の日本語版「チョコレート・バイブル」。既に出版されていた英語版の日本語訳だけでなく、変わりゆく市場情報がきちんと更新・追加されている他、更に特別対談として能科学者 茂木健一郎氏とクロエ女史のショコラに関する興味深い対談も冒頭に加えられています。

 

チョコレート本質主義とも言えるクロエ女史の情熱が、やさしく繊細な言葉でしっかりと綴られている1冊。見た目はコンパクトですが、読み応えはたっぷりです。この本で興味深いのは、自分が口にするショコラや、美味しい、あるいは好きと感じるショコラの自己分析方法が掲載されていること。プロも行うショコラテイスティングの基本から、香りの重要性、舌上での味わいの感じ方などが細かく紹介されています。

 

 アカデミックな内容を含みながらも分かりやすく、更に日本語で綴られている本は意外にも少ないもの。ショコラと真剣に向き合ってベーシックから勉強したい、ファイン板チョコレート(ハイクオリティー板チョコレート)とは何であるか・誰が作っているかを知りたい、あるいは自分の味覚を客観的にとらえ更に1歩進んだテイスティングをマスターしたい、という方に是非オススメの1冊です。

 


c-55-03.jpg もう一冊はAll aboutで活躍するカフェライターの川口葉子さん、藤原ゆきえさん、今話題の雑貨アイテム・マスキングテープにも造詣が深いライター江沢香織さんのお三方が共同で執筆された「ショコラの時間」。チョコレートLoversのために書かれた一冊で、ショコラ都市へと変貌を遂げている東京のショコラ40店の紹介や手作りショコラ用クーベルチュールチョコレートの紹介、ショコラのレシピ、ショコラ雑貨やシネマの中に登場するショコラなど、ショコラまつわる様々な内容がページを捲ると次々に登場します。

 

 表紙の帯にもある通り「ショコラって、たのしい」、そう素直に思える1冊です。ちょっとソファーに腰掛けてチョコをつまみながら読むも良し、ベットに横になりながらペラペラするのも良し。本編の東京ショコラの紹介も充実ですが、個人的には後半に登場する「紙の上で愉しむ 言葉のショコラ」がオススメ。世界各国のチョコレート(ショコラ)が登場する小説や、チョコレートが重要な役割を担っている一節などが紹介されています。国境を越えた世界でチョコレートが、実は「情熱」「愛」「禁断の甘美」などのキーワードで繋がっていることに気づかされます。

 

 チョコレートが好きな人なら、ここで紹介されている文学世界のチョコレートも楽しく頂けるはず。“口ではなく頭で食べるチョコレート”、一度お試しになってみてはいかがでしょうか?

 


c-55-04.jpg さて、チョコレート繋がりの本ということで今度は今年出版された絵本「チョコレートがおいしいわけ」をご紹介。絵本作家の“はんだのどか”さんが、果敢にもカカオ生産国のガーナやチョコレート工場に実際足を運んで取材し、そうして書き上げた素敵な絵本。「チョコレートがどうしておいしいのか?」という誰もが一度は感じる素朴なテーマを、カラフルで可愛いイラストとともに、お子さんでも理解の出来る甘くやさしい言葉で解き明かします。

 

 でもこの本、子供向けの絵本と侮るなかれ。カカオが育つところからカカオ豆になるまで、またカカオ豆から今度は工場でチョコレートになるまで、更にはショコラトリーで一粒の美味しいショコラが生まれるまでを実に詳しく、でも驚く程簡潔にまとめているのです。膨大な情報を一言にまとめることほど難しいことはありません。著者のはんださんが沢山勉強された痕跡が至る所で感じられます。

 

 大人が読んでも充分読み応えがありますし、多分この絵本を読む大人の皆さんの大半が実はカカオからチョコレートになるまでの一連の流れを初めて知ることになると思います。可愛いイラストの中に細かな描写とメッセージが沢山盛り込まれた、本格的なチョコレート絵本。大人も子供もチョコ博士を目指すなら、必修科目の一冊です。

 

 ちなみに特典で付いてくる「チョコレート新聞」は私もこっそりお手伝いさせて頂きました。さて、どこで登場するでしょう?気になる方は書店へGO!!是非探してみて下さいね。

 


c-55-05.jpg 最後にご紹介するのは、バレンタインに出版されたアカデミックな本。製菓用油脂研究の第一人者である広島大学 佐藤教授と、チョコレート科学の第一人者 元明治製菓の蜂谷氏によって監修・翻訳されたその名も「製菓用油脂ハンドブック」。このコラムを読んで下さっている方の中で製菓関連の研究所にお勤めの方がいらっしゃったら、是非読んで頂きたい専門書です。

 

 チョコレートは水分を殆ど含まない「油脂」の世界の食べ物。ですから主要油脂分であるココアバターや、ミルク・ホワイトチョコレートに含まれる乳脂肪の物性、性質を理解することは極めて重要です。様々な研究データとともに、化学的視点からチョコレートやそれに関係する油脂が解説されています。コラムVol.43でご紹介したチョコレートに利用される植物油脂に関しても、大変詳しく説明されています。

 

 ハートチョコが印象的なかわいらしい表紙なのに、内容は超ハード。油脂の世界を勉強していないとちょっと難しいですが、専門的にチョコレートを勉強されたい方はチャレンジしてみて下さい。ちなみに3月に購入した私の本は、既に付箋紙と蛍光ペンのマークだらけになっています。私もまだまだ道半ば。しっかり勉強させてもらっています。

 

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 カカオ・チョコレート・ショコラに関しても沢山の情報がインターネットで手に入る時代ですが、やはりきちんとまとまっている書籍にはそれぞれに意味があります。

 

 寒暖差の著しかった4月が終わり、時折夏日を感じる5月となりました。
チョコレートの季節が終わったかなと感じる方、今度は頭でチョコレートの情報を食べてみて下さい。しっかり読んで脳で糖分を分解すると、甘いものを求めてチョコレートが食べたくなるかも!?

 

          2010/05/04

 


地球の歩き方 arucoパリ   ダイヤモンド社/ダイヤモンド・ビック社
チョコレート・バイブル   クロエ・ドゥートレ・ルーセル  青志社
                   (宮本清夏/ボーモント愛子/松浦有里 監訳)
ショコラの時間    川口葉子/藤原ゆきえ/江沢香織  青山出版
チョコレートがおいしいわけ   はんだのどか  アリス館
製菓用油脂ハンドブック   監修 佐藤清隆/翻訳 蜂屋巖  幸書房
 

 
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