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可可豆見聞録

Vol. 37 数字で見るカカオ市場2008/08/31

 この夏の大イベント「北京オリンピック」が終幕して一週間。余韻覚めやらず、選手の話題で盛り上がっている中、チョコレート業界ではある選手がもたらした思わぬ効果が噂の的となりました。体操個人総合の銀メダリスト、内村選手。

 

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 彼の好物が某社のチョコレート菓子であることがメディアを通じて伝えられると、お盆休み明けの商品の受注は通常期の3倍を記録したそうです。嘘か誠か、オリンピック前にはメーカーから320個が寄贈され、そのうち80個を勝負食として北京まで持参したとか。


 連日30℃を越える猛暑日だったこの夏、活気に欠けていたチョコレート市場に平成生まれの若き選手が、銀メダルとともに明るい話題を届けてくれました。


 それでも、チョコレートを取り巻く状況は前途多難です。
 その一つが原料であるカカオ豆の高騰。当コラムではVol.29にてカカオ豆の高騰について既に触れましたが、それは昨年の年末までのお話。その後のカカオ相場は勢い止まることなく、今も価格の高騰が続いております。


  ニューヨークの原油相場は一旦ピークを迎えたため、この9月から久しぶりに市場への供給価格が引き下げられるようですが、カカオ相場の世界では方向感の定 まらない状況が伝えられています。ラ・ニーニャ現象による影響、主要生産国でのカカオの病気による生産量の減少、ハリケーンの影響、市場への供給量の増 加、更に投機といったものが相場に密接に関係しているようです。


 ではどの程度カカオ豆が高騰しているか、実際にグラフで見てみましょう(グラフ1)。

 

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 ご覧の通り、昨年12月にご紹介した後のカカオ相場は急激な高騰を続けております。2008年1月から6ヶ月間の上昇率は 136%。かつて1,500US$/だったカカオの値が、今年6月にはその倍を記録しました。つまりそれはこの3年間で、相場上のカカオ豆価格が2倍に なったことを表します。


 世界的な動きとして、現在チョコレートはカカオ含有値の高い“ハイカカオ”が好ま れる方向に移行しつつあります。ハイカカオのチョコレートを作るには、当然原料となるカカオ豆がそれまで以上に必要です。チョコレート市場全体の需要増と ともに、カカオ豆の磨砕量(カカオ豆を潰す量)はカカオ生産国、チョコレート生産国ともに増えている現在、そのカカオ豆価格が急激に高騰していると言うこ とは、どの生産者にとっても対処の難しい問題です。


 しかも、この高騰現象がカカオ生産者である小規模農家に対して大きな潤いをもたらしているかと言えば、上昇分の差益が彼らの手に十分に渡るとは言い難い状況にあります。


  そんな原料高にもかかわらず、味わいに対するこだわりを貫き通すのが日本人なのでしょうか?2007年までの過去7年間に日本に輸入されたカカオ豆を分析 してみると、実に面白い状況がうかがえます。それはベネズエラのカカオ豆が他国のカカオ豆以上に高騰しているにもかかわらず、その輸入量が増えているこ と。


 ベネズエラと言えば希少で高品質なカカオ豆や、特徴的な香りを持つカカオ豆の生産により世界から注目を集めている国。生産地域によりカカオの特徴が異なり、シングルビーンズで仕立てる“プレミアムチョコレート”の原料としても、しばしば用いられています。


  実は現在、この国のカカオ豆輸出量の約半分、国の生産量全体で見てもその3割が日本に向けて輸出されています。ベネズエラのカカオ豆は様々な要因が重な り、結果的に大幅な価格高騰の道を辿っている状況にあるのですが、日本が輸入している主要3カ国のカカオ豆のうちガーナに次ぐNo.2として現在そのポジ ションを収めています。確かに輸入価格を比較すると、その上昇率は他のカカオ豆の群を抜いています。

 

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 2007年には日本のカカオ豆輸入量の約10%を占めたベネズエラのカカオ。価格高騰の大きなハンディーの中でも、その輸 入量が緩やかながら伸びていると言うことは、そこにプレミアムチョコレート市場の成熟を映した、香味にこだわる日本ならではの嗜好が関与している可能性が うかがえます。


■ ■ ■


 さて、 チョコレートを作るために日本も輸入しているカカオ豆ですが、その輸入構成には各国の個性が見られます。どの国も世界のカカオ生産量の7割を占める、味作 りの基礎カカオ豆・ベースビーンズを多く輸入しているのですが、それを1国に集中して輸入するか2~3国に分散するかは、各国によって様々です。

 

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 ここで2006/2007における各国のカカオ豆輸入構成を見てみましょう(グラフ4)。例えば、日本の場合はベースカカオ豆をガーナ1国に委ねていて、その量も輸入量全体の7割強を占めています。


  年間5万トン以上のカカオ豆を輸入する国の中では、1つのカカオ生産国とこれほど密接な関係にあるのはとても珍しいケースです。更に先に申し上げたよう に、日本ではガーナカカオ豆に次いで、フレーバービーンズに区分されるベネズエラやエクアドルのカカオの輸入量が多いことも特徴として挙げられます。


  一方、ドイツやフランスといったスイスを除く欧州の場合、その多くは複数のアフリカのカカオ豆で7割以上を占める構成となっています。天候やカカオの病 気、政情など幾つかの不安要素を抱えるアフリカ諸国との取引において、予め複数国からのベースカカオ豆輸入のスタイルにしておけば、もしもの危険を回避す る際に大きな効果が期待できます。


 チョコレート好きの方の中には、欧州のショコラトリーでは数多くのプレ ミアムチョコレートが見られるため、それらの国ではもっと多くのフレーバービーンズが輸入されているのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません が、統計上ではそういったカカオ豆は少量の取引であるため、大きな数字で現れることはありません。ゆえに“プレミアム”なチョコレートであるのでしょう。


 アメリカはヨーロッパと異なり、アジア・カリブ・太平洋にまで大きなカカオのマーケットを保有しています。そのためインドネシア、パプアニューギニア、ドミニカ共和国のカカオ豆なども、大きな単位で取引されているのです。


 では次に、先程の円グラフでは各国の輸入カカオ豆構成を横並びで比較したので、今度は年間の輸入量で各国を比較しましょう。

 

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 2006/2007の世界カカオ豆生産量は338万t。一方消費国であるアメリカとドイツのカカオ豆輸入量は、この生産量 に対して各10%強の輸入量を占めています。世界最大のカカオ輸入国オランダを含めると、世界のカカオ豆の4割程度は、オランダ、アメリカ、ドイツの3カ 国が輸入している計算になるのです。


 国民一人当たりのチョコレート年間消費量(2004年)のデーターで は、ドイツは11.1kgで世界第1位、次いでスイスの10.8kg。アメリカはベルギーやオーストリアなど数カ国に続く世界第8位を示しています。にも かかわらずアメリカのカカオ豆輸入量がドイツをしのいでいるのは、アメリカ産チョコレートが世界各国に出荷され、国内消費+海外消費の合算で供給見通しが 立てられるからです。


 ちなみに、この年間消費量の多いスイスのカカオ豆輸入量が日本より少ない1つの理由として、スイスで消費されるチョコレートの多くがカカオ含有量の少ない“ミルクチョコレート”に起因していることが考えられます。


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 こんな風に、カカオやチョコレートを取り巻く数字からは、カカオ経済における世界地図や、その国の嗜好など色々なことを読み取ることが出来ます。今まで知らなかった世界が、“数字”というベクトルで繋がってくるのです。


 一方で、一目瞭然の数字にはそこで伝えられる現状と、隠された現実の両側面を秘めていることがあります。


 例えばこのカカオ豆価格の高騰の背景で、カカオ農民のどれだけの人がその恩恵を受けているでしょうか?「統計には表れない隠された数字」今度はそんな部分も皆様にお伝え出来ればと思っています。

2008/08/31

参考 ICCO(Inter National Cocoa Organization) http://www.icco.org/
Supply-Demand XXXIV-3 / Importing Country XXXIV-3 /
Exporting Country XXXIV-2 / Index Notes Market Review XXXIV-3
Cocoa Price Monthly Averages
財務省貿易統計http://www.customs.go.jp/toukei/info

 

 
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