- Vol. 31 セレブなショコラ2008/02/22
世界的に有名なブランド「ブルガリ(BVLGARI)」が表参道にカフェとショコラトリー「IL CIOCCOLATO」を開いたのは、昨年11月のこと。ゴージャスな内装とイタリア食材にこだわったショコラの噂を耳にはしていましたが、なかなか買い に行く機会に恵まれず、先延ばしにしているうちにバレンタインシーズンとなってしまいました。

バレンタインの1週間前、お店に行ってみると平日の夕方にもかかわらず店外にはショコラ購入を待つお客様の列。私もその列に並び、順番が来るのを待っておりました。
15分後・・・思ったよりも早く順番が巡り、いざ入店。最初に私の目に飛び込んで来たのは、小さくも洗礼された店内と計算された空間、それからお洒落なユ ニフォームを着こなす女性スタッフ、そしてお待ち兼ねの“BVLGARIロゴ入り”のショコラでした。お値段はブルガリならではの価格帯。なんと一粒の ショコラが¥600~¥1,500で提供されているではありませんか。
ショーケースに並ぶ眩いばかりのショコラたちは、全てイタリア食材を使用した、特徴的で素敵なショコラばかり。“ブルガリのショコラ”という付加価値を考 慮すると、ある程度の価格帯ではあるだろうとの心構えは有りましたが、実際のお値段は¥400/粒のチョコレートで話題となった「デルレイ」のショコラも 超越した、私の想像を遥かに超えるものでした。 イタリアでショコラ製造に携わる知人に早速写真とともに報告。返ってきたメールには「この価格で販売されているなんて、まさにアメイジング!!」と驚きの 声が添えられていました。チョイ渋でお洒落、グルメなイタリア人の彼にも驚きのショコラだったようです。
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いつの頃からか、気が付いたら日本は空前の「ショコラバブル」を迎えていました。敢えてその始まりを記すとすれば、ボンボンショコラ文化の草分け的存 在、フランスの「ラ・メゾン・ドゥ・ショコラ」の日本初出店や(2000年)や、同フランスの「ジャン・ポール=エヴァン」、ベルギーの「ピエール・マル コリーニ」といった実力派ショコラティエの相次ぐ東京店オープンがその“きっかけ”として挙げられるように思います。その後年々海外からの新ブランド出店 が進み、今ではバレンタインイベントの大半は、それら海外ブランドが話題、売上ともに市場を牽引している節が有ります。
そのように急速に進んでいく日本の高級ショコラ市場の中で新星として現われたのが、2005年ファッション界から登場した「ARMANI DOLCI(アルマーニ・ドルチ)」のショコラでした。世界のアルマーニの中でもショコラを販売する店舗はたったの6店。その4店目としてショコラを取り 扱う店が、東京の新名所・丸の内に構える「アルマーニ・ドルチ」です。
ジョルジオ・アルマーニ氏によってデザインされた「A」の刻まれたショコラや、天面がカラーリングされたショコラなど、キューブ型を要したショコラは ¥1,575/4粒。当時はまだ価格の高めなショコラでも¥300/粒程度の時代でしたが、ここでは更にワンクラス上の“ラグジュアリー価格”に設定され ていました。
更に2006年にはアルマーニに続き、GUCCI銀座店の4階に「GUCCI CAFE(グッチカフェ)」がオープン。ミラノに続く2店目のこちらでは、喫茶の他に“GUCCIのロゴ入り”のショコラ(現在¥2,000/4粒)を販 売。そして2007年11月には先述のブルガリがチョコレート事業に着手。
海外の指折りショコラティエたちが手がける高級ショコラのブームに追随するかのように現われた高級ファッションブランドのショコラ。一部の雑誌では、“ こういったショコラを男性が女性に贈ると宝石と間違えられる可能性が・・・”なんてユニークな注意事項を紹介しておりましたが、それだけ「特別な人に渡し たいショコラ」という位置付けを確立しているように思えます。
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年々新しいブランドが登場し、粒単価も上昇しているショコラ。「海外の指折りショコラティエ・パティシエが手がけるインポートショコラは高い!!」「高いけど一度は食べてみたい!!」そんな心の葛藤を、皆さんは感じたことが無いでしょうか?
私もその一人。まだ試したことのないシェフのショコラが気になるのは当然のこと、一度食べたことのあるシェフでも“今年はどうだろう”、“日本で食べると どんな風に感じるだろう”と気になって、結局いつの間にか財布から福沢諭吉さんがいなくなっていることもしばしば。そんな中で一粒あたりの単価がオドロキ だったものでは、先のブルガリの他、30歳の若さでショコラのM.O.F.(フランス国家最優秀職人)を取得した、フランスの「パトリック・ロジェ」の ショコラがその例として挙げられます。
確かに、2008年のバレンタインでは円安/ユーロ高の影響も受け、¥400/粒を超える価格のショコラが随分と見られました。
タブレット(板チョコレート)も¥2,000/100gを越えるものが少なく有りません。本国で販売されている価格と比較すると、2倍、あるいはそれ以上の価格になっていることもあるのですが、それを疑問に思われる方はきっと少なくないでしょう。
では何故それほどまでに輸入ショコラには価格差があるのでしょうか。
特に差額上昇の著しい輸入ショコラのバレンタインイベント販売において、価格に関与する大まかな項目を挙げて見ましょう。・ まず、ベースとなるのは現地と日本側との間で決められる、元のショコラの取引価格です。(-①基本価格)
・この価格に為替が関与します。現地で100円感覚のショコラ(1ユーロ)であれば、日本では約160円。
(2008年2月23日現在)(-②為替)
・これを日本に輸入する場合、一般マーケットで販売されるショコラなら、10%の関税がかかります。(-③関税)
・更に現地での配送運賃、海外から日本までの配送運賃、日本での配送運賃が上乗せされます。
再度為替(燃料費等に関与)が影響してきます。空輸での配送であれば、尚更です。(-④運賃)
・箱詰め、仕上げ(リボン等)作業を日本でするときは、その作業工賃。(-⑤工賃)
・イベントなどで販売を外部販売員に委託した際の人件費(-⑥人件費)
・イベントなど出店料、もしくは主催者側マージン。路面店なら土地代。(-⑦出店料)

思いつく必要経費類を簡単にまとめても、これだけの項目が列挙できます。輸入代理店と販売代理店が異なっている場合にはダ ブルマージンで更に販売価格が増しますし、ディスプレイやパンフレットを作ったりすれば、販促経費が膨らむこともあります。(-⑧販売促進・マーケティン グ)更に付加価値付けで、商品は本国と同じでも日本の顧客向けに特注仕様のパッケージを用意するところもあります。
そういった様々な条件・状態と為替変動などのリスク分を加味した上で、日本での販売価格は決められることが大半。ショコラの中には販売するときにショー ケースの手配が必要なもの、在庫リスクの高いもの(賞味期限が短いもの)も多数あります。こうやって一つひとつの条件を数え上げていくと、輸入ショコラの 価格が本国と大きく異なるのも、納得せざるを得ないように思えてきます。
さて、ここでおことわりしておき たいことが一つ。先にご紹介したブルガリのショコラは国内店舗の厨房で作られています。空輸でもないのに結構なお値段がするのは、そこにブランドとしての 付加価値が付いているからです。“ブルガリのショコラ”としての品格を備えるパッケージ等のアクセサリー代、ブランド代等がしっかりと含まれているので す。
“セレブなショコラ”とは単に技術力だけでなく、そのブランド性が問われるもの。それに見合う価格が 付加されることは、ファッションやコスメの世界と何ら変わらないようです。先述の「ラ・メゾン・ド・ショコラ」のように、ファッション界のショコラだけで なく卓越した技術のショコラティエのショコラも、パッケージ等の目に映る部分だけでなく、プロモーション・マーケティング等の商品に直接関わらない部分で テコ入れするか否かで、その商品やブランドの価値が変わってくるのです。
但し、こういったショコラの美味 しさは、人それぞれ意見が異なると思います。価格と味わいは必ずしも比例するわけでは有りませんし、ショコラがある種の芸術性を含み始めた現在、それぞれ の価値は異なって当然です。純粋に味への対価と、ショコラという素材を用いた創造への対価、ファッション性への対価はそれぞれ違う方向を指しているので す。
ともあれ、ちょっと気になるお値段のショコラには必ず理由があるはず。そんなショコラを見かけたら、 いったいどこに価値が付けられているのか、皆さん自身の目で探ってみて下さい。タイトルを取った職人のショコラなのか、某国王室御用達のショコラなのか、 門外不出だったショコラなのか、限定のお味なのか、稀少なカカオを使ったものか、はたまたファッションとの融合を追及した新たなショコラなのか・・・など など。
こうやって商品の「価値」と真剣に向き合っていくと、ショコラの世界がまた違った形で見えてくると思います。
■ ■ ■それにしても、バレンタインにそびえる男女間の垣根は取れないものでしょうか。男性でも気になるショコラがあるのに、女性優位の雰囲気の中ではなかなか買いに行けないと思っている人もいるはず。
一方女性の中には、“プレゼントするより私がショコラをもらいたい!! ”と思っている人が多いはず。某インターネットサイトのバレンタインアンケートでは、回答者の女性の実に9割が「逆チョコ制度」に賛成だったと報告していました。
そういえば、「友チョコ」はすっかり市場に定着しましたね。販売のお仕事を手伝っていると、年齢を問わず女性がお友達用にショコラを選ぶ姿を大分見かけるようになりました。これはある意味、男女の垣根を取り払うファーストステップであったのかもしれません。
ちなみに私は今年「世話チョコ」を頂きました。バレンタインの最終日、あと少しで明日を迎えるという頃、一緒に働いたスタッフからメサージュ・ド・ローズの薔薇のショコラを、笑顔と感謝の一言とともに。
実のところこの仕事をしていると、周りの知人は皆私にショコラを送ることを敬遠しがち。でも今回、若いスタッフから貰ったこの小さなショコラが、バレンタイン商戦の終幕を迎え、疲れきった私をどれだけ癒してくれたことか。
感謝の気持ちを込めたショコラは、やっぱり頂くと嬉しいもの。
来年はどうぞ遠慮なく、Give me more chocolate !!
2008/02/25
* BVLGARI IL CIOCCOLATO 東京都渋谷区神宮前5-10-1 ブルガリ表参道ツイン・ショップ2F
* ARMANI DORCI 東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル1F
* GUCCI CAFE 東京都中央区銀座4-4-10 GUCCIビル4F






