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可可豆見聞録

Vol. 27 VIVAメヒコ!! カカオの街2007/10/29

カカオ豆の起源に関しては大きく分けて3説有りますが、世界で多く語られている説は、“カカオの起源がメキシコ南部からグアテマラ太平洋側(ソコヌスコ)にかけての「クリオロ種」である”こと。中でもメキシコのチアパス州は古くからのカカオ栽培が今にも続き、マヤ時代のカカオ栽培を表す石碑まで残っている地域です。

 

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 ところが古代メキシコ(メソアメリカ)の文化においては、このチアパス地域よりメキシコ湾岸側、現在は石油の採掘で発展を遂げているタバスコ州の方がそ の歴史が古く、「マヤ文明」が栄える以前から「オルメカ文明」(紀元前1250年頃~起源前後)と呼ばれる文明が栄えていました。


 「タバスコ州」と聞くと“唐辛子ソースの「タバスコ」”を思い出す方が多いでしょうが、実際にはあのタバスコとこのタバスコ州に密接な関係は有りませ ん。“唐辛子ソースの「タバスコ」”は、アメリカ・ルイジアナ州でタバスコソースを開発したマキレーニ社によって1902年に商標登録した名前。その「タ バスコ」がタバスコ州や唐辛子の種類と同一の名前のため、一度商標権が取り消されてしまったのですが、訴え続けた結果再び商標登録として使用出来るように なったそうです。


 ちなみにこの“唐辛子ソースの「タバスコ」”を日本で初めて販売したのはアントニオ猪木氏の会社だそうです。以前TVでこの話題を耳にして驚いた記憶が有ります。

 

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 タバスコ州はメキシコ湾岸沿いに広がる土地で、海抜が低く空から見るとラグーンや幾つもの川が流れている湿潤で肥沃な大地を 持ち合わせています。じめっとした湿気と暑い気候はカカオ栽培に適しているため、この周辺地域では沢山のカカオ農園が有り、現在ではかつてのカカオ名産地 チアパス州を抜きメキシコ最大のカカオ産地となっています。

 古くから文明が栄えていたため、現地では“クリオロ種の起源はチアパス州ではなくタバスコ州である”との一説がある程です。


 メキシコのカカオを使用したチョコレートと言えば、ピエール・マルコリーニのタブレット「メキシコ・ポルセラーナ」が日本では有名ですが、日本自体には メキシコ産のカカオ豆は輸入されておりませんでした。それがここ3年、特に2006年に急激に輸入されているのです。その関係でこの辺りのカカオにはかな りの興味を持っていたのですが、さすがに中々行く機会が有りませんでした。

 

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 今年に入り、森永製菓のWEBサイトでタバスコ州に「カカオロード(ルータ・デ・カカオ)」が有ることを目にし、早速調べて みたところタバスコ州の州都“ビジャエルモッサ”から少し離れた地域“コマルカルコ”に「ビジター見学OKのカカオ農園」が存在することを知りました。そ んなカカオ農園が1つあるなら他にもあるはずと調べを進め、結果3つの農園を探し出しメールでアポイントを取ることが出来ました。


 4月のオアハカ行 きを決めたとき、本当はそのままグアテマラに南下する予定で航空券を取っていたのですが、このアポイントが取れたことにより急遽スケジュールを変更し、オ アハカからコマルカルコへ向かうことにしました。思い立ったが吉日。“悩むより動け”の独自理論に従った行動が、このあと思わぬ出会いを迎えることとなる のです。


■ ■ ■


 コマルカルコへ行くには州都ビジャエルモッサに一度出てから車かバスを乗り継いで行く方法が最も便利ですが、時間にも乗客にもルーズなメキシコのローカルバスは余り好きではなく、バス行きをためらっていたときに、訪問予定の農園主から連絡が有りました。

 

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 esus Maria農園のオーナー・カセップ氏が平日は州都、週末はコマルカルコの農園で過ごしているため、金曜日の夕方に車で飛行場まで迎えに来て下さり、その 足で農園まで連れて行って下さるというのです。まだ会ったことも無い人に迎えに来てもらうのはずうずうしいかと思ったのですが、荷物も多いし、バスに乗る ことがどうしても気が進まなかったので、お言葉に甘えてお世話になることにしました。

 

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 前回お話ししたオアハカ州の州都「オアハカ」 は山の中の盆地の街。昔から続くマヤの生活が今尚名残を残している地域ですが、今回訪れたタバスコ州の州都「ビジャエルモッサ」はマヤより更に古い「オル メカ文明」の発祥地。しかし現在では石油の産出により急激な発展を遂げている地域で、古い文明の名残は跡形も無く近代的な建物がズラリと並ぶ地方都市とし てその名を連ねています。「コマルカルコ」はここから45分くらい車で進んだ街。ここにはオルメカ文明の後に栄えたマヤ文明の遺跡も残っていますが、街の 中心はオアハカのようにマヤの血や文化を引き継ぐ色は無く、明るくて素朴な湾岸の街の印象が有ります。


 コマルカルコでの滞在は2泊。ホテルはインターネットでは中々見つけられず、オフシーズンだったので現地で直接予約をすることを考えていました。そのことをカセップ氏に告げると「農園に泊まります?」と思いもよらぬ回答が返って来ました。農園?農園の中に泊まる・・・?

 

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 そのとき私は、以前別の農園で農園管理者のご家族の家に泊めて頂いたときのことを思い出しました。カカオ農園は日が暮れると蚊が沢山飛び交うので注意は 必要ですが、農園に泊まる最大のメリットは朝早い様々な仕事を起きて直ぐ見られること。ホテルに泊まって街からタクシー出勤では、朝一の仕事を見逃してし まう可能性があります。しかも通常は街から遠いことが殆ど。ここJesus Maria農園も街から近いとは言い切れません。


 然私は即答でOKし、その晩はお言葉に甘えて農園に泊めて頂くことにしました。このとき私は“きっとカセップ氏の家族は農園の中で管理責任者として居住し、余っている部屋を私に貸してくれるんだ”と、大きな勘違いをしていました。


 ビジャエルモッサから途中寄り道をしていると、あっという間に夜がすっかり更け、22時を回った頃に私たちはやっと農園に着きました。到着後、私は農園 に住む別の管理者のご家族を紹介され、そのあとそこから少し離れた一軒の平屋に案内されました。「ここが今日泊まるところ」そう紹介された家からは当然カ セップ氏のご家族が中にいらっしゃって、「BienVenidos(スペイン語のWelcome)」で迎えて下さるものと思っていました。ところが家の中 は真っ暗で、中から音一つさえ聞こえてきません。


 そのとき私は、以前別の農園で農園管理者のご家族の家に泊めて頂いたときのことを思い出しました。カカオ農園は日が暮れると蚊が沢山飛び交うので注意は 必要ですが、農園に泊まる最大のメリットは朝早い様々な仕事を起きて直ぐ見られること。ホテルに泊まって街からタクシー出勤では、朝一の仕事を見逃してし まう可能性があります。しかも通常は街から遠いことが殆ど。ここJesus Maria農園も街から近いとは言い切れません。


 当然私は即答でOKし、その晩はお言葉に甘えて農園に泊めて頂くことにしました。このとき私は“きっとカセップ氏の家族は農園の中で管理責任者として居住し、余っている部屋を私に貸してくれるんだ”と、大きな勘違いをしていました。


 ビジャエルモッサから途中寄り道をしていると、あっという間に夜がすっかり更け、22時を回った頃に私たちはやっと農園に着きました。到着後、私は農園 に住む別の管理者のご家族を紹介され、そのあとそこから少し離れた一軒の平屋に案内されました。「ここが今日泊まるところ」そう紹介された家からは当然カ セップ氏のご家族が中にいらっしゃって、「BienVenidos(スペイン語のWelcome)」で迎えて下さるものと思っていました。ところが家の中 は真っ暗で、中から音一つさえ聞こえてきません。

 

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 その「サロン・ド・ショコラ」の言葉を耳にしたとき、私は去年同じ会場でソンブレロ(メキシコの帽子)をかぶったおじさんにカカオ豆で出来たネックレス をプレゼントして頂いたことを話しました。「私も会場でカカオ豆のネックレスを配っていましたが・・・」とカセップ氏。もしやと思いノートパソコンに保存 していた画像を探っていくと、カカオ豆のネックレスを提げている私の写真が出てきました。「これ、私が配っていたネックレスです!!」


 どうやらカセップ氏が配っていたカカオ豆のネックレスを、私が偶然にも会場で頂いていたのです。お互いそんなことを知らず、メールで連絡を取り合い、“ 初めまして”とメキシコで再会。世の中には様々な奇遇がありますが、これ程までに国と距離が離れた奇遇はかつて私が経験した中でも最大級のものでした。
 

■ ■ ■

 

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 カセップ氏のJesus Maria農園はカカオと共に様々な木々が共存しています。カカオを守る陰木の数は通常のカカオの農園よりも多く、色合い鮮やかな花の木、ゴムの木など様 々な種類が見られます。この農園の作り方は環境を保護しながらコーヒーを育てる「サステナブル・コーヒー」の考え方に非常に近く、現在のこの農園には陰木 としての日陰の他、副産物としての果実・種子が豊富に採れる木も植えられ、結果沢山のO2(酸素)を放出していることが考えられます。平たく言えば、手入 れは大変ですが非常に環境に優しいカカオ農園と言えるでしょう。

 

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 驚いたのは「パタシュテ」の栽培も行なっていること。「パタシュテ」は以前コラムVol.14でご紹介したカカオの亜種でテオブロマ属ビコロール種に属する果実。「パタシュテ」の相性で呼ばれていて、古くマヤの時代にはその種子をチョコレート作りの際にカカオと共にブレンドして使用されていましたが、現在では主に中南米でナッツのように焙煎して食べられています。


 パタシュテの栽培を余り耳にすることは有りません。これをわざわざ栽培する理由を尋ねたところ「私の趣味です」と笑って答えていました。私もカカオに関 して“マニア”筋の一人ですが、その私がこの人は農園主としてだけではなく同類のマニアだと悟ったのは、この答えを聞いた瞬間でした。

 

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 そんな方が作るカカオです。現在はトリニタリオ種が多いものの、メキシコの農業研究所とタイアップしてクリオロ種復興の研究を進めたり、カカオ苗の栽培、豆の乾燥方法を色々検討したりと精魂込めて品質改善を日々研究しています。


 esus Maria農園にはチョコレート自社工場も有るので、自分で作ったカカオをその場でチョコレートにして品質を確かめることが出来ます。カカオの農園ツアーで訪れたツアー客は、ここでチョコレートのお土産を買って帰ることも出来るのです。

 

 

 

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 ちなみにコマルカルコの街には、徒歩でいけるカカオ農園「Hacienda La Luz」や、タクシーで数分の「Finca Cholula」も有ります。La Luz農園は現在農園を支えるマリアさんのひいおじい様(ドイツ移民)が始めた農園。現在マリアさんはその歴史を伝えるために、園内に手作りでチョコレー ト博物館を設営中。Finca Cholula農園には農園に住む沢山の猿と、イケメンのマノロさんに会うことが出来ます。


 日本から個人で行けるカカオ農園として「コマルカルコ」はオススメです。カカオ農園見学を一つの観光産業としているところはそう多くは有りませんから。

 私のように個人で行くも良し(但し通常農園には宿泊出来ません)、ビジャエルモッサの空港からツアーデスクを通して「ルータ・デ・カカオ(カカオロー ド)農園ツアー」に申し込むのも良いでしょう。団体ツアーに申し込むと、Jesus Maria農園では園内でマリアッチが素敵な音楽でお迎えしてくれるプレゼントもついてきます。


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 私がメキシコでお会いした方で、最も親切なカセップ氏。メキシコらしい彫りの深い顔立ちにはどこか愛嬌があって、彼の人の良さが滲み出ています。その彼 とは、10月に行なわれたパリの「サロン・ド・ショコラ」で再会しました。ソンブレロを被って毎日チョコレートの紹介をしている愉快なメキシコのおじさま は、傍目にはクリオロ種復興に力を注ぐ熱きカカオ生産者には見えないだろうな・・と、遠くから不思議な気分で眺めていました。


 ちなみに彼の夢はサロン・ド・ショコラのコンテスト・タブレット部門でグランプリを取ることだそう。今はカカオ栽培に注力しているのでチョコレート技術はまだまだ。でもいつか、彼の夢が叶うそんな日がやってくるのかも知れません。



2007/10/29


* Jesus Maria農園・Cacepチョコレート(英語/スペイン語/フランス語)
   http://www.cacep.com
* Finca Cholula農園(スペイン語)
   http://www.fincacholula.com.mx/
* コマルカルコ カカオ農園情報(スペイン語)
   http://www.comalcalco.gob.mx/turismo/129/haciendas/hacienda.php

 

 
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