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可可豆見聞録

Vol. 9 甘しょっぱいチョコレート2006/03/17

3月14日は、「ホワイトデー」でした。皆様はどのような一日を過ごされたでしょうか?

 2月14日は「バレンタインデー=チョコレートの祭典」というイメージが年々強まる傾向に有るようですが、最近はどうやらバレンタインだけでは無く、ホ ワイトデーまでもがチョコレートの世界に入りつつあるように感じます。正式な発表がされている訳では無く、市場を見て体感的に感じたことですが、都内の チョコレートショップを覗いてみると、確かに列に並んでチョコレートを購入する男性陣の姿が見られます。

 「ホワイトデー」と言えば、焼き菓子類や小物類の贈り物が相変わらずの人気を誇っているようですが、そんな中で一歩ずつチョコレートが忍び寄っている姿 に、不思議なものを感じます。定番の垣根を越えて、“貰って嬉しいホワイトデーギフト”にチョコレートが名乗りを上げる、いつかそんな日が訪れるかもしれ ません。なんて、チョコレートをひいきし過ぎでしょうか?

 

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c-09-01.jpg さて、話はバレンタインデーに戻ります。
 私の場合のバレンタインデーは、誰かにプレゼントするというより、むしろ自分用にチョコレートを購入する日です。普段から食べていても、限定品が登場し たりすると、気になって仕方が有りません。先日、今年購入したチョコレートを分類したところ、「塩入りのチョコレート」がポツリポツリと紛れていました。

塩の入ったチョコレート?

と思われた方がいらっしゃるかもしれませんね。ここ数年見られるようになってきた、ある種“ニューカテゴリー”のチョコレートと呼んでも過言では無いでしょう。

 

 このタイプのチョコレートは、タブレット系とボンボン・ショコラ系に分かれます。
 タブレット系は、その名の通り、板チョコレートに塩の顆粒が入ったチョコレート。噛めばジャリっとした食感が楽しめるものが多く見られます。
 ボンボン・ショコラ系は、ガナッシュに塩を混ぜたり、塩味のナッツをプラリネにトッピングしたりと、食感と言うよりはむしろ、塩味の効果を利用して旨みを引き出したものが多いように思います。

 どちらのタイプにしても、基本的には「甘しょっぱい」。チョコが融けだした途端に、塩のしょっぱさが広がります。後から甘さが追いかけ、そしてカカオの 余韻。とても不思議な風味なので好き嫌いはあるようですが、“はまり度”も高いようで、お酒に合わせたりすると美味しさが増すという、隠れた魔力も潜んで います。

 私たちの生活の中では、スイカに塩をかけたり、お汁粉に塩を加えたりと、「甘味」と「塩味」のバランスを利用した食べ合わせは数多く存在します。製菓の 世界でも良く見られる組み合わせですが、あくまで「塩」は隠し味としての役割の多い存在。それがこともあろうにチョコレートの世界で、カカオ・砂糖と共に 主役の座を張ろうとするのですから、随分と大胆な挑戦ではないですか。

 

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 私が生まれて初めて食べた塩チョコ、時間を遡って思い出すと、2003年2月に食べた銀座の「和光チョコレートショップ」の「アマンド・サレ(期間限定 商品)」に辿り着きます。ボンボン・ショコラ系の粒チョコで、香ばしい香りのプラリネと、塩を絡めたクラッシュアーモンドのバランスがとても良く、旨みを 引き出す塩味のアクセントと、その繊細さに驚いたことは今でも忘れません。(現在は「サレ」という商品名の期間限定・塩ミルクガナッシュのチョコレートで す)
 自由が丘「オリジーンヌ・カカオ」でも「アマンド・サレ」が取り扱われています。アーモンドとチョコレートの甘さ、その美味しさの均衡を破る塩のアクセントは、逸品です。機会があったら、是非召し上がってみて下さい。

 

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 その後しばらく塩チョコを口にする機会が無かったのですが、2004年10月に再び私の目を覚ましたのは、前回12mのロング塩バターキャラメルでご紹 介した、アンリ・ル・ルー氏の「Fleur de Sel」(現在は「EMBRUMS」の商品名に変更)。フランス・ブルターニュ地方のショコラティエ・キャラムリエであるル・ルー氏が、2004年に作り 出した新作のショコラ。日本のサロン・ドュ・ショコラでも二度販売されているので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
 心地よいカカオ感のビタータブレットの中に広がる、ブルターニュ地方ゲランドで作られる海塩“フルール・ド・セル(塩の花)”の塩味、ミネラルの風味が 何とも魅力的な一枚。海の音が聞こえてくるような、そんな風景を閉じ込めたチョコレート。噛むと、少し粗めの塩がカリカリと砕ける感触が楽しめ、塩そのも のの美味しさも充分に楽しめます。初めての一口の印象は「うわぁ」。それ以上の言葉が見つからない、衝撃的な出会いでした。

 塩チョコは何も高級店ばかりでは有りません。ロッテの定番「クランキー」も塩入りを限定発売したことが有りますし、明治製菓のアンテナショップ「100%Chocolate Cafe.」では塩とコーンを入れたチョコレートを取り扱っています。
 リーズナブルな商品から、高級プライスまで、ゆっくりと塩チョコは裾野を広げているようです。

 

 

 

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 塩チョコに合わせるチョコレートは、ビターやミルクなどの決まりは有りません。すべて作り手の感性に委ねられます。先にご紹介した「Fleur de Sel」はカカオ67%のビターベースですが、イタリア・ドモーリ社の「Latte Sal」や、イギリス・ロココチョコレートの「See Salt」はミルクチョコレートにそれぞれ塩を加えています。

 昨日、私もタブレットの塩チョコレートを作っていたのですが、実は塩の加減はカカオの種類、カカオ含有量、ミルクの有無によって、微妙に配合量を変えて いかなければなりません。人間の味覚と言うのは面白いもので、例えば酸味や苦味の有無が、塩味を感じる感覚に別作用を与えるようです。甘味より塩味の方が 人間は早く舌に感じるようですが、チョコレートの場合、その他の因子も様々な影響を与えるのでしょう。
 ですので、ビターチョコレートに入れた塩の量を、そのままミルクチョコレートに加えると、また違った塩味に感じられます。

 塩入りチョコのタブレットは、テンパリングが出来れば簡単にご家庭でも楽しめますので、機会がありましたら、是非試してみて下さい。基本は100gの チョコレートに、指二本で軽く一つまみの塩加減。混ぜてみて、濃ければチョコで薄め、足りなければ足してみて下さい。指三本で一つまみの塩加減では、かな りしょっぱくなるので、ご注意下さい。

 

ポイントとなるのは以下の3点。

1.塩の種類 (岩塩、海塩、焼き塩など)
2.粒サイズ (粗め、細かめなど)
3.ベースとなるチョコレートの風味 (ビター、ミルクなど)

 ドライフルーツをトッピングしても美味しいですし、アーモンドやヘーゼルナッツを組み合わせても美味しいです。ガナッシュ仕立てなら、レモンやパッションフルーツ、香辛料を添えても良いでしょう。なんて、想像するだけで美味しそう。
 お酒の好きな方なら、お酒の準備も忘れずに。酒のつまみに塩チョコレート。ちょっとおしゃれに飲みたいときは、そんなアイテムも素敵なのでは。

 そういえば、男性に人気があるという「ホテルオークラ」の男性向けチョコレートシリーズ「おとこたちの空間」では、今年のバレンタインに“レモン&岩塩”のチョコレートを販売したとか。
 今から1年かけて、バニラシュガーのように、塩にレモンの香りをじっくり移して、胡椒と合わせた塩チョコレートを来年のバレンタインに作るのも、面白いかもしれませんね。愛情と時間のタップリ詰まった、人生のように「ピリリと甘しょっぱい」チョコレートになるのでは?

2006/03/17

 

* 富澤商店直営店やオンラインショップでは、各種塩・原料クーベルチュールを購入することが可能です。

 
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