- Vol. 1 美味しい「ショコラ」を食べた後に・・・。2005/06/05
チョコレートの仕事を始めて8年が過ぎました。スタートした頃は丁度「生チョコ」全盛時代で、口溶けやわらかなチョコレートに市場は大いに盛り上がってい ましたが、それ以上に目覚しいのが、昨今のショコラブーム。市場を牽引しているのは「一粒のボンボン・ショコラに魅かれて」なんて言葉が似合いそうな、光 り輝く“粒チョコ”たちと、それを作るショコラティエの存在です。
「チョコレート」が「ショコラ」と呼ばれる機会が増えてから、ショコラティエの作るチョコレートは、“おしゃれな大人の嗜好品”を象徴する新しいカテゴ リーとしてすっかり認識され、香りの繊細なショコラとシャンパンやワインとの組み合わせを楽しむ「ショコラバー」なるものまで、登場し始めました。年々進 化するショコラ市場は、東京を中心に全国規模に波及中で、その背景には「ジャン=ポール・エヴァン」、「ラ・メゾン・ドュ・ショコラ」といった“遠きパリ から空を飛んで届く”フレンチ・ショコラの影響が大きいようです。
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パリの有名ショコラトリーやパティスリーへ行くと、日本人の店員の方がいることもしばしば。フランス語が出来なくたって、こ ういったお店では日本語で安心して買うことが出来ます。事実私がショコラを買いに行くときは、必ずといって良いほど、ショーケース前で迷っている日本人女 性;それも旅行でパリに来たという方に出会います。“旅の楽しみは「食」にあり”。パリで美味しいスイーツを食べることは、女性にとって観光目的の1つに 定番化しつつあるようです。
こういった現象は、それだけパリ・スイーツが私たち日本人女性をときめかせていて、興味の奥深くまで 浸透している証拠。パリの雰囲気がそうさせるのか、本場だから興奮してしまうのか、とにかくスイーツ好きなら「あの店」「この店」と、少しでも知っている お店に誰もが目移りしてしまうはず。
しかし、良く考えれば私たちにとって素敵なパリ・スイーツも、フランス人にとっては“地元スイー ツ”。何かを食べるとき、私たちはつい“美味しさ”に“雰囲気”や“お店の知名度”、“シェフの名前”といった+αを含めがち。でもフランス人はもう少し スマートに、純粋に自分に合う“味”や“店”に比重を置いている部分が高いように感じます。パリの「サロン・デュ・ショコラ」で2度販売の手伝いを経験さ せて頂いたときに、身を持ってこれを体験したことが有ります。
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「サロン・デュ・ショコラ」とは今年で11年目を迎える、毎秋パリで行われるショコラの祭典。期間中はチョコレートドレスのファッションショー、パティシ エ・ショコラティエのセミナー、タブレット・ショコラやボンボン・ショコラの新作のコンテストなど、連日催しが盛り沢山。もちろん会場内でショコラを買う ことが出来、フランス各地のショコラトリーのみならず、海外のショコラトリー、メーカーと総勢150もの出展があります。フランスのチョコレート文化を語 る上で、今や外せないものと言っても過言では無いでしょう。とにかく大きくて、1日フルにいるとチョコレート酔いをしそうなほど。
そんな「サロン・デュ・ショコラ」でお手伝いをさせて頂いたときのこと。私がお手伝いしたお店は、日本の「サロン・デュ・ ショコラ」では既に人気店ですが、フランスでは地方の名店故に、パリではまだ知らない人も時々いました。販売するときに店の知名度はプラス要素で売り上げ に影響するのは確かなのですが、それ以上にココで重要なポジションを占めていたのは、シンプルに「美味しさ」でした。
試食のショコラやキャラメルを手渡すと、お客様はその場でしっかり吟味。気に入れば笑顔で「今の2 袋!」「私は3つ。」と即決購入が大半。初めてのお店でも、「幸せになれる美味さ」があれば、その人のお気に入りポケットにスルリと入ることが出来るので す。買うか、否かの決裁権は、女性だけでなく連れの男性の方が決めることも多く、「また買うの?」なんて奥様に言われながらも、余裕顔で支払う旦那様も。 荷物持ちだけでは終わらない、フランスの男性は試食にかなり積極的。ココでは男女問わず、考える時間にしても購入量にしても、試食1つで即答できる、サバ サバとした買い方が本当に印象的です。残念ながら試食だけの時も「C'est bon.Merci.(美味しいわ、有難う)」と一声置いていく人が多く、黙って立ち去らない、フランスらしいマナーと心意気に、思わず感心してしまいま した。
それにしても「サロン・デュ・ショコラ」の会場内は人、人、人。10周年の昨年は5日間、のべ12万人の来場者ですから、それもそのはず。中でもファミ リーは良く目に付きます。会場が広く、沢山のチョコレートの試食が出来るので、子供たちには格好の“遊び場”。口の周りどころか両手まで茶色くベタベタに なって笑う子、買ったショコラを食べさせてもらえなくて泣いている子と、喜怒哀楽が行き交う会場。手伝いをした店も例外でなく、クマ、ウサギ、ネズミなど キャラクター型の棒付ショコラが、子供たちから大人気でした。

「サロン・デュ・ショコラ」は大人だけでなく、子供も楽しめる空間。会場入り口付近には「子供工房」が設けられていて、ハロウィン用のショコラにチャレン ジ。まるでおもちゃ遊びのように、次の消費者世代はすっかりショコラの虜です。他の子供たちに目をやると、赤帽子をかぶった“ちびっ子調査団”が会場の一 角でじっと立ち止まり、ショコラティエ ル・ルー氏の実演に釘付け。出来立てショコラはもちろん子供たちにプレゼントされ、順番待ちに、子供たちの目は一様にキラキラ。あの子たちが何を学んだか は判りませんが、ピュアなショコラの味と、幸せの隠し味を感じることが出来たのであれば、とても素敵な“社会見学”ですね。こうした次世代への文化の継承 が楽しみながら出来るのも、「サロン・デュ・ショコラ」のもうひとつの特徴なのかも知れません。

子供のうちから沢山チョコレートに触れているから、大人になってもチョコレートが大好き。当然のことかもしれませんが、フランスを含めたヨーロッパのチョ コレート文化には、こうした根がしっかり息づいていることを改めて実感します。そういえば、フランスでは味覚の授業を設けている小学校もあるとか。「料理 は文化」と提唱されるフランスならではと、思わず納得です。皆が大好きなチョコレート、日本でもおいしい“ショコラ”を食べた後に、次世代へ何かが残せる といいですね。
2005/06/05






